モーリシャス沖座礁事故に思うこと その2

こんにちは、よーぶんです。

前回に引き続き今回の座礁事故に関して、
現在わかっている範囲で一般的なお話をしていきたいと思います。

まず今回の座礁事故は根本的な原因はひとまず置いておいて、
本船Wが何らかの理由により、
本来の航路を外れてしまったために発生しました。
通常本船は目的地が決まると二等航海士(2/O)が航海計画を立案、
それを船長が承認すれば、それに基づいて航海します。
もちろんこれは傭船者の承認も取り付けるのも前提です。
船長には最も安全且つ経済的な航路を選択する義務があります。
この場合の”経済的”というのは航海時間並びに燃料消費量を指します。

実際の航路選択については、
かつては船長に委ねられる部分が大きかったのですが、
現代においては自動船舶識別装置(AIS)の搭載が義務化されて以降、
陸上から本船の位置を把握することが可能になりました。
これによって本船が予定航路を外れるような航路選択をした場合、
陸上側がそれが何故かを問い合わせることが出来ます。

今回のケースではWiFi電波を求めて航路を外れた旨の報道がありますが、
よーぶん氏の常識からするならば後に必ず咎められるような航路離脱を、
本船が意図的に行ったというのはいささか腑に落ちません。
これは単に傭船者から咎められるだけという簡単な話ではないからです。

本船都合による航路離脱に要した期間は傭船者からすれば、
傭船契約(CP)に定められた傭船期間という定義から外れることになります。
傭船契約範囲外行動ならば、
傭船者はその期間相当の傭船料を支払う義務はありません。
従ってこの期間を明確にした上で振り込む傭船料を減額します。
またこの期間に消費した燃料油についても船主に請求します。
燃料油については傭船する側の都合で必要なものであるため、
これは傭船者の費用負担という事になっています。
これを本船は傭船者都合とは異なる本船都合で消費したわけですから、
傭船者がこれを本船所有者である船主に請求するのは至極当然なことです。

これを船主側から考えてみましょう、この傭船料減額や燃料油費用請求は、
船主からすれば明らかな損害であり、
本船の取った行動は明確に会社に対する背反行為です。
船長等への問責事項であり、彼らは解雇されても文句は言えません。
なぜなら特に船長には、
最も安全且つ”経済的”な航路を選択する義務があると前述しました。
船主にとって傭船料減額等になる航路が経済的であるわけがありません。
従ってこれはそれに対する明確な義務違反です。
そしてその他乗組員は船長の指示に従う義務があります。
船長以外の乗組員が無断で航路離脱を図ったとするならば、
これは船長が義務を果たしている行為に対する背反であり、
船長指示に従うという船内規律に対する明確な義務違反です。
こんな船舶乗組員として常識的なこと、
且つすぐにバレるようなことにリスクを冒すだろうかと。
従ってWiFi電波云々の報道によーぶん氏は懐疑的なのです。

もうひとつ乗組員の誕生日パーティー云々の報道がありました。
よーぶん氏にはこっちの方がクサいなぁと思っています。
二等航海士が立案した航海計画がどのようだったか定かではないので、
ここから先はよーぶん氏の憶測でしかないのですが、
本船Wが座礁する以前に航海計画上の変針点があったのでは?と考えます。
船舶は通常海上をひたすら直進します。
目的地までの複数箇所で変針転舵、すなわち舵を切ることで航路を修正し、
再度ひたすら次の変針点まで直進します。
直進中はAuto pilotを作動させて舵を固定します。
変針点でAuto pilotを解除、手動で任意の方角へ舵を切り、
本船がその方角への転進を確認後、舵を戻してAuto pilotを作動させます。
このごく初歩的な手順が報道にあったパーティーの影響によって、
何らかの手落ちが発生したのではとよーぶん氏は推測します。
例えば当直士官らが禁じられているはずの飲酒をして、
当直に立っていたために手順を誤った、もしくは居眠りしていた等。
報道だと本船Wは座礁直前まで11knot余りの速力で航走していたとのこと。
このクラスの本船は通常速力が約12knot程度なので、
本船Wはほぼ通常速力で走っていたことになります、その先に浅瀬があるのに。
これは本船乗組員がその航路に何の疑いを持たずに操船していたか、
もしくはそんなことに気付く状態になかったのふたつです。
従ってよーぶん氏には操作の手順ミスもしくは居眠り等により、
浅瀬に座礁したという筋書の方が自然な気がします。

もちろん繰り返しますが、これらはよーぶん氏の憶測です。
いずれにしても現在の船舶には航空機のフライトレコーダーに相当する、
航海情報記録装置(VDR)の搭載が義務付けられていて、
船橋においてどのようなコマンドが行われたのか、全ての信号が記録されます。
今回のケースでは沈没、炎上等の類の事故ではないので、
VDRのデータは何の問題もなく回収される、いやもう回収されてるでしょう。
この残されたデータを解析すればおおよその事故原因は判明するはずです。

ちなみにこのVDR、そして前述のAISは搭載が義務付けられているだけでなく、
年1回のMaker技術者による点検整備が義務付けられています。
もし不具合があった場合は直ちに修理しないといけません。
仮にそれを放置しているようなことが発覚すれば、
安全義務違反でこれが発覚した港からの出航を禁じられる場合もあります。

最終的な事故原因は海難審判により明らかにされると思いますが、
いずれにしても船長以下本船乗組員の過失は明らかだろうと考えます。
やっぱり思っているよりも長くなりました。
事故原因についての考察で一区切りさせてもらいます。
次回は一番長くなるかもしれません、
事故処理についてお話ししたいと思います。